ゼロベースからのビジネスモデル構築。100年企業、4代目候補の人を惹きつける方法

㈱ダイビ・取締役前田髙志さん 取材(会社外観)

ゼロベースからのビジネスモデル構築。100年企業、4代目候補の人を惹きつける方法

 
みなさま、こんにちは。引き出しのプロ&戦略コーチ 香西 拓也(こうざい たくや)です。
 
独自の視点から気になる「あの社長」「あの会社」を突撃取材。
そして、
独自の視点で取材をしたことをご紹介するブログです。
 
今回は、
株式会社 ダイビ
取締役 前田 高志(まえだ たかし)さん
を取材して来ましたので、ご紹介したいと思います。
 

㈱ダイビ・取締役前田髙志さん 取材
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今回は、歴史も、文化/風土も、そして、実績もある100年企業の4代目候補に取材をさせて頂きました。
企業の宿命。
それは、「仕事を作り続ける」ことだと考えます。しかし、ビジネスモデルが成熟すると新たなビジネスモデルを構築しなければなりません。私どもSANNETが提唱し、提供しているチーム再構築コンサルティングの中の本質的な課題で言えば、「経営の実務面の成長」であり、中でも、ブランディングと言うフェーズにあたります。
今回は、既存領域から全く異なる事業領域に踏み込み、新たなビジネスモデル構築で1番を目指している100年企業の4代目候補・株式会社ダイビ、取締役・前田高志さんに、新規ビジネスモデル構築の要諦をお伺いします。
 

株式会社ダイビの成り立ち・仕事

-今日は、よろしくお願いします。前田さんとは、とある経営者が集う異業種交流会で初めてお目にかかり、会社の所在地が、私の地元の大阪市住吉区ということもあり親近感を感じていました。今日お話しがお聴き出来る事を楽しみにやって参りました、どうぞ宜しくお願い致します。
 
前田;はい。お手柔らかにどうぞお願いします(笑)
 
-早速ですが、「株式会社ダイビ」のことからお聞かせ下さい。
前田;はい。ありがとうございます。
   我が社は、創業;1918(大正7)年。
   初代社長:世良政次郎が、山口県下関にて、合名会社下関寫眞印刷社を設立し、コロタイプ印刷業を開始したことが始まりでして、主な業務内容は、スクールアルバム 学校案内 会社案内 写真集 絵画集 ノベルティの企画・制作・運営といった事業をさせて頂いております。
中でも「スクールアルバム」がメインの事業柱となっていまして、全国各地の幼稚園・小・中・高校、大学に納めさせて頂いております。
 
株式会社ダイビ 外観
 

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-全国ですか?
前田;はい。お蔭様で。これも余談になりますが、実は私の卒業した高校のアルバムもダイビが製作していました(笑)もし宜しければ、ご自宅かご実家にあるこれまでの卒業アルバムの一番後ろのページを見て下さい。もしかすると、弊社が製作したアルバムかもしれません。

-ところで、初代のお名前が世良さん。現社長は前田さんですが、これはどういうことなのですか?
前田;私の祖父(前田丹次)は、創業者・世良政次郎の次女と結婚しました。政次郎には3人の息子がいましたが、病死等で後継者になれず当時銀行役員を継て、リース会社の社長を勤めていた祖父が顧問としてダイビの経営に参画しており、政次郎の後継に就任(二代目)しました。
 
-そうだったんですね。
 
前田;印刷業界のことを知らない祖父は、銀行マンとして積み上げてきたキャリアを活かし、現場のことは社員の方々に任せ、自分は財務面の健全化を図りました。それなら、誰にも負けないと考えたようで、そのお蔭で現在、パート・派遣社員合わせ約130名の社員が仕事をこうして続けていられるのも先人の功績の賜物だと感じています。
 
-素晴らしいですね。ご自身の強みを経営に活かすことを懸命にお考えになられたのですね。
 

人の上に立つより縁の下の力持ち

ー前田さんご自身のお話を聞かせて下さい。
 
前田;私がダイビに入社をしたのは、2010年9月、29歳の時でした。
 
-どんな経緯があったのですか?
 
前田;当時、私は封筒の印刷などを手掛けるある印刷会社のカスタマーセンターで電話営業を担当していました。営業が受注してきた仕事の後処理をするのが主な仕事です。受注後のお客様とのやり取り、納期、製造現場とのやり取り、調整、クレーム対応まで行っていました。最初は怒られてばっかりだったのですが、いつしかお客様の声を聞くだけで、どこの会社の何というお名前の方かも分かるようになってきていて、お客様からも営業担当より前田さんの方が信頼できる!とまで言って頂けるようになっていました。
 
-凄いですね!仕事が楽しくて仕方なかったでしょう?
 
前田;はい。私がダイビに入ることなど夢にも考えていませんでした。
 
-社長であるお父様のお考えはどうだったのですか?
 
前田;父も、当初は社員で次期社長に・・・と思う人材がいました。そして、何より私自身、石橋を叩いて渡る真面目な性格で、人の上に立つよりも縁の下の力持ちと言う特性があると思っていましたので、後継者として、次期社長になろうなんて、微塵も考えていませんでした。
 
-そんな前田さんがなぜ?今、ダイビにいらっしゃるのですか?
 
前田;2010年に、経理担当の社員が退職することになり、弊社の社員から父に「そろそろ高志さんに会社に入ってきてもらおう」という提言があったそうです。
 
-悩まれましたか?
 
前田;はい。両親にはここまで育ててきてもらった恩もあります。しかし、本当に自分は社長の器ではないことも分かっていました。
 
-どうされたのですか?
 
前田;いろんな方に相談したりしました。しかし、母からの進言もあり、最後は「後継者としてではなく、一社員、一経理担当者」と言うことで入社することを決意し、父に伝えました。
 

営業職のオモシロさを体感

-社内ではどのようなキャリアを積んでこられたのですか?
 
前田;入社当初は、経理でした。同じルーティン。同じことを黙々とする仕事が好きでした。
 
-前職に通じるものが
 
前田;はい(笑)
 
前田;そして、総務人事へ移り、計7年をそこで費やし、その後、営業部(営業部長として)へ転属しました。
 
-営業部ですか?
 
前田;私、営業という仕事が好きではなかったんです。
 
-そんな風に見えませんが。
 
前田;当社の仕事は先ほどもお話ししたようにスクールアルバムなのですが、学校が直接のお客様ではなく、町の写真館さんを通してアルバムの印刷・製作をしていました。そして、少子化の影響もあり、既存の売上が徐々に下降気味になっていました。
 
-自社の将来を考え、取り組まれたのですね。
 
前田;まず、既存事業をより安定的にする必要があると考えました。そこで、新規の顧客を開拓する必要があると部内で話し合い、私が新規開拓の役割をすることになりました。どうしようかと考えた際に社員からのアドバイスもあり、東京の市場を開拓してみようと考え、単身週単位で東京に通い、顧客を開拓していきました。
 
-営業嫌いの前田さんとしては、英断ですね。それで、どうなったのでしょう?
 
前田;会社の経費を使わせて頂く訳ですから気合い入りました。
 
-どんなアプローチをされたのですか?
 
前田;いきなり、スクールアルバムと言っても既存の取引があったりして、なかなか入り込めないのは分かっていました。幸いにも、弊社には、それ以外の扱いも出来ましたので、まずはアルバム以外の商材を出して話をすることから始めました。すると意外にいろんなことを話して下さって、しかも、大阪から来ている事が伝わるとお茶出してくれたりして、いい感じで開拓が出来ました。
 
-自信になりますね。
 
前田;おっしゃる通りです。自信になりました。営業ってこんなに面白い仕事なのかと思いました。
 
前田;また、東京には学生時代の友人たちも働いていたので、夜は夜で東京を堪能していました♪♪(笑)そこで、営業ってオモシロいなぁ~なんて初めてそんな経験をすることが出来、営業職の醍醐味を味わいました。
 

自分にしか出来ないアルバム以外のこと

-こうしてお話を伺っていると前田さんの本質的な資質がうまい具合に開花されていっているように感じますね。
 
前田;そうでしょうか(笑)
 
前田;とはいえ、少子化は大きな社会の流れです。弊社も既存事業以外の事業も今のうちから作っていくことが必要と言う認識で、営業部部長の肩書に加え、「新事業推進部」と言う部の兼任でもありました。
 
-なるほど!余力のあるうちに次の展開を創る対策ですね。
 
前田;アルバムの営業は、私なんかよりズッと社内にはスペシャリストの方たちがたくさん存在していましたので、私にしかできないアルバム以外のことに取り組んでみることを考えました。
 
-まさに、ゼロベースからのチャレンジをされたのですね。
 

オタク文化向けの新規営業

前田;ゼロベースからのチャレンジということで、着目したのが「オタク文化」でした。ニッチではありますが、その奥深さと意外にも大きいマーケットニーズがあることが分かり、ここを軸に新事業を考えました。

【ダイビの新事業推進により生まれた製品】
 
◆ペーパークラフト
㈱ダイビ ペーパークラフト
 
 
◆アクリル板 置時計
㈱ダイビ アクリル板置時計
 
 
◆鉄道ファンのためのスマホケース
㈱ダイビ スマホケース
 
-いろいろな商品を作り出されていますね。面白いです。
 
前田;ありがとうございます。
 
前田;アイデアは出て、いろいろな商品が生み出されたのですが、どうしても発想が既存事業の領域を出ない。延長線上での展開になっていると感じていました。
 

前例のない未知の領域への”挑戦”

前田;ある時、とあるプロダクションさんからプレゼンの依頼を受けました。それは、ある子ども向けアニメのリメイク放送を記念したグッズを制作してほしいという内容でした。
 
前田;すると、社員から「前田さん、石鹸。どうですか?いいですよ」

-石鹸ですか?
 
前田;笑。私も同じ反応をしました。
 
前田;でも、頭から否定するのは自分でも性に合わないので、聞いてみたところ、情報をリサーチしてくれていて。その分野のグッズで石鹸を扱っているところが全くなく、オンリーワンになるイメージもありました。
 
-社員のアイデアを否定せず、聞く姿勢って大事ですね。そして、前田さんの真面目で石橋を叩いて渡る性格がここで発揮されたわけですね。
 
前田;プレゼンに向けさらに情報を集めはじめ、提案したところ、見事、「採用」が決定しました。
 
-チームの協働の成果ですね。
 
前田;はい。嬉しかったです。しかし、ここで落とし穴が待っていたのです。
 
-と言うと。
 
前田;実は、提案のことばかり必死で取り組んでいまして、作るところを探していなかったのです(笑)
 
-なんと(驚)
 
前田;どうしよかと考えた結果、プロダクションからアドバイスを頂いておりました現場調査をした際に驚いた¥9,700-の石鹸と出会い、製造会社を確かめると同じ大阪市内の会社であることが分かり、訪ねてみました。
 
-凄い行動力ですね。
 
前田;その会社のプレゼンがさらに凄かったんです。
 
前田;書類なし。サンプルを手渡され「一度、実際に使ってみてください。それで、いいなぁと感じたら、また来てください」って言うんです。
 
-凄い。製品に余程の自信があったのですね。
 
前田;早速、サンプルを持ち帰り。社内の女性スタッフに配って、感想を聞かせてほしいとお願いしました。

前田;すると、多数のスタッフから「また使ってみたい♪」という声が聞かれ、この会社の石鹸で製品化を進めようと決断しました。
 
-手探り状態ながら、前例のない未知の領域への挑戦がスタートしたのですね。
 

偶然の縁とチャンスの扉

前田;一難去って、また、一難でした。
 
-何があったのですか?
 
前田;原価です。自然由来の成文のみを使った手作りであるため製品にするとコストが合わないのです。
 
前田;子ども向けのグッズですから、親が出せる価格帯に開きがあったのです。しかし、私は、この石鹸が自分も使っていてとても気に入っていました。諦めたくなったのです。
 
前田;そんなある日、とあるエステサロン経営者のご紹介で出会った別のエステサロン経営者の方にその悩みを打ち明けました。とても初めて逢ったとは思えないほど意気投合しまして、かれこれ4・5時間。お互いのプライベートなことも話しました。
 
-4・5時間も、まさに意気投合ですね。どんな話をされたのですか。
 
前田;実は、私、若い頃から、とある人気バンドグループ「M」さんの大ファンでして、そんな話までしました。
 
前田;すると、帰り際に、その女性の方から言われたのです。
 
前田;「仕事の話をしている前田さんと人気バンドグループ「M」のお話をしている前田さんとでは、表情が全く別人ですね。いっそのことそのボーカルの方の名前にちなんだ石鹸を作ってみてはどうですか?」って・・・
 
-なんと!
 
前田;驚きました。しかし、調べてみると人気歌舞伎役者の方のネーミングのスイーツが販売されていたり、マーケティング的にも、大手や既存業者が既にいる領域への新規参入は障壁があり、追いつくまでにかなりの体力を要します。しかし、ニッチな大手が手を出さない領域では、横一線の状態。この領域にこそ中小企業の新規販路開拓、新事業構築のチャンスがあることも学びました。
 
-まさに、ゼロベースからのチャンレンジという訳ですね。
 

本当にやりたいことの情熱が”人を惹きつける”

前田;そして、何より好きな人や好きなことを考えている時の自分がそれほど情熱と言いますか、エネルギッシュでいることを言われて初めて気づくことが出来ました。
 
-情熱が人を惹きつけるんですね。それで社内の方には、どう説明されましたか。
 
前田;あの手この手いろいろな策を考えました(笑)当然、リサーチもしましたが、最後は飲み会を開き、みんなをいい気分にさせたところで、何とか力を貸してほしいと頼みました。
 
前田;みんな、「前田さんが楽しんで出来るならば、やりましょう」と言ってくれました。
 
-本気が伝わったのですね。
 
前田;そして、生まれたのがブランド名『NAMED FACIAL SOAP』です。ブランドコンセプトは、日本特有の苗字にスポットを当てた石鹸で苗字の由来や漢字をイメージさせる石鹸です。
 
前田;その第一弾が、商品名「Mr.Sakurai」
 
㈱ダイビ Mr.Sakurai 石鹸
 
㈱ダイビ Mr.Sakurai 石鹸
 
前田;夢はいつかこの商品のことが口コミで、”あの方”に届き、「最近、僕の名前にちなんだ石鹸があるって聞いたんだよねぇ~。で、さっそく使ってみたら凄い幸せな気持ちになれたんだ。お風呂に入りながら、生まれたこの曲聴いて下さい」なんて言ってご紹介頂き、いつかお会い出来る日を夢に今、頑張っています。
 
㈱ダイビ・取締役前田髙志さん 取材
 
-凄い迫力とエネルギーを感じます。
 
前田;ありがとうございます。そして、この石鹸は、無添加で環境に配慮した優しい石鹸です。綺麗な地球を残したい、そして、後世の子供たちにも届けたいと考えています。
 
-もうすっかり魅了されました。そして、御社の本業が、印刷・アルバム製作の会社であることも忘れてしまっていました。ぜひ、前田さんの夢の実現、そして、御社の今後の益々のご発展を心から祈念しています。
 
前田;ありがとうございます。がんばります。
 
◆株式会社ダイビ ホームページその他関連サイト
https://www.daibi.co.jp/
https://www.daibi.co.jp/trainfan/
http://www.daibi.co.jp/e-kinen/
https://busbito.com/
https://www.bukuwa.jp/
 
◆株式会社ダイビ 公式youtubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC32ELYxBJxSfiDtygKVCo5Q/featured

取材まとめ

業歴があり、一定量の仕事も確保出来ていることは、本当に素晴らしいことです。
経営者の仕事は、経営の全般にわたり維持・成長・発展をすることであるとするならば、売り上げの地盤が安定している間に次の一手を模索し、構築する必要もあると今回の前田さんの取材を通して感じました。
新規の事業構築には時間が必要です。
 
社内外にあるリソースをフル活用して”ビジネスモデル”を創り、お客様から選ばれる理由を”ブランディング”して、ありとあらゆる手段、コミュニケーションを駆使して伝える。このことに注力をすれば、事業は構築できます。
 
経営資源に余力のあるうちに、手を付けたいものです。
 
 
今回も長文にも関わらず、最後までお読みくださりまして、ありがとうございます。
 
【リンク】
◆前田さんがご出演のラジオ番組のブログ記事
http://sannet.me/2021/10/01/tsunagariradio20211001/