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本気で潰そうとした会社、大きな溝のあった社員が今は私の宝です
みなさま、こんにちは。引き出しのプロ&戦略コーチ 香西 拓也(こうざい たくや)です。
独自の視点から気になる「あの社長」「あの会社」を突撃取材。
そして、
独自の視点で取材をしたことをご紹介するブログです。
今回は、
合同サービス配送有限会社
代表取締役 樋谷 羽津美(ひだに はづみ)さん
を取材して来ましたので、ご紹介したいと思います。
社長になることに憧れ、目指していた訳でもなかった樋谷さんが、今なぜ自社車両35台、社員30名・専属契約者25名の会社(注;合同サービス配送有限会社 HPより引用)の社長になられたのか?波乱万丈の人生。会社を潰す覚悟までした樋谷さんに訪れた転機。チーム再構築で提唱しているチームづくりに必須の3つの本質的な課題の中より、「経営者の意識の発達」の視点よりご覧頂くことで、社長や組織のリーダーの皆様がご自身を重ね合わせ社長・リーダーとしての自分自身への問題提議、課題発見となることと思われます。最後まで、お読み下さりますと幸いです。
プロフィールを見て、「なぜ?」の好奇心が湧き立ちました
-今日は、よろしくお願いします。樋谷さんとは、とある経営者が集う異業種交流会のオンライン上の打合せで2度ほどでお目にかかっただけでした。
樋谷;はい。そうでしたね。
-その後、SNSで友達申請をした時に樋谷さんのプロフィールを拝見して、「なんで・・・?」「どういうこと・・・?」と私の好奇心が湧き立ちました。
初代社長の苗字は、「樋谷」ではない・・・
最終学歴を見ると、某お嬢様女子短大・・・しかも、英文科。
ある意味、異色の経歴ですよね。
どのような背景があって樋谷社長が誕生し、今があるのか?私の好奇心から今日お目にかかれることを、楽しみにしていました。どうぞよろしくお願いします♪♪
樋谷;何か恥ずかしいですが(笑)、お願いします。
志望職種は「営業職」だった
-大学が大阪でも有名なあの某お嬢様大学の英文科?
樋谷;見えないでしょ・・・(笑)4年制大学を希望し、英語の先生になることが夢だったのですが、諸事情あり短期大学ならと両親から許可を得られたので、英文科に進学しました。そして、短大在学中から「営業職」に憧れを抱くようになり、就職は食品流通系の会社へ就職をしたんです。
-希望に満ち溢れた社会人一年目のスタートですね・
樋谷;その日のためにスーツを買って、出社した初日。会社からそっけなく青色の作業着を渡されたんです・・・(驚)
「これに着替えて・・・早く」
先輩社員から言われた言葉は、今も心に残っています。
そして、来る日も来る日も、ピッキングの作業の日々。
次第に、不満が募っていきました。
チャンス到来
-それでどうしたんですか?
樋谷;不満も限界に達して、その会社を2年で退職しました。そして、ちょうど職を探している時に、豚まん屋の新規店舗の店長としての話しがきて、対面販売はずっとやりたかった仕事でしたので、お受けしてそのお店で働くことにしました。
-ずっとやりたかったことのチャンスがやってたんですね。
樋谷;はい。開店直後、豚まんは飛ぶように売れました。楽しくて仕方なかったです。
-そんなに売れたんですか
樋谷;はい。凄かったです(笑)でも、それが急激に売れなくったんです・・・。
覚えていらっしゃいますか?
狂牛病事件です。
そして、加えて、餃子事件。
立て続けに、お肉に関する社会問題が起こり、販売していた豚まんも次第に売れなくなっていきました。
-恐ろしい。
運送業との出会い
樋谷;そんな時、豚まん屋を経営していたA社長から運送の事業を新たに始めることになったので、そっちをやって欲しいと声がかかったんです。
-それが、今の合同サービス配送(有)ですか?
樋谷;はいと言いたいのですが、その会社が合同サービスではないんです。A社長が始めた運送会社に仕事を出していたのが、この合同サービスだったんです。私たちの会社は、合同サービスの下請け会社でした。
樋谷;私は、A社長の会社の専務と言う立ち場で、合同サービスの担当者として仕事をもらいに行っていた立場でした。それが、この会社との最初の出会いなんです。
-運送の仕事についての知識はいかがだったんでしょうか?
樋谷;笑・・・もちろん、私自身配送車に乗る経験もありませんし、ましてや運送業の知識なんて全くなかったので、手探り状態でした。現場で発生するトラブルも、都度都度、足を運び、解決をすると言う具合で、すべてが勉強でした。
-そんな樋谷さんが、何故?合同サービスの社長になられたのですか?
樋谷;我々の会社も少しづつ実績を重ね、力を付けてきた時に、A社長は、合同サービスが仕事を受けていた会社と直接仕事を始める決断をされたんです。
-えっ、飛び越えて、直接ですか?ご法度では?
樋谷;なので、合同サービスの当時の社長、Bさん(初代社長)に、のれん分けと言う形で了承して欲しいという直談判をされたんです。
-なかなか有り得ない展開ですね
樋谷;そうなんですが、B社長も了承されたんです。
-その後は、どうなっていくのですか?
樋谷;A社長の会社は、ドンドン仕事を受注し、売り上げを拡大させていく一方で、合同サービスは、のれん分けにより、売り上げを大きく落とすようになりました。そして、悪いことは重なり、B社長が体調を崩され、お亡くなりになられました。B社長の奥様が経営を引き継がれますが、上手くいくはずもなく、ある日、A社長の元を訪ねて来られ、助けを求められました。
-合併吸収ですか?
樋谷;いえ。私に合同サービスの社長として行け!と言う指示が下されました。
-えっ!樋谷さんを社長にですか。
樋谷;はい。そうです。
樋谷;当時の私は、A社長の信者のようなもので、私にとってA社長は絶対的な存在でしたから、「はい」の一言でしたし、数年頑張って、A社長の会社と一緒にグループ化出来ればいいとそんな風に思い、意気揚々と合同サービスに行くことにしました。
合同サービス配送の社長としてのデビュー
-社長として社員の皆さんは温かく迎えて下さったのでしょうか?
樋谷;そんなわけないじゃないですか・・・笑
超アウェーもいいところですよ・・・笑
樋谷;今まで下請けだった担当者で、且つ、自分ところの会社の売上を横取りしていった会社の人間が、自分の会社の社長になるのですから、番頭角の社員を筆頭に私を良く思う人は少なかったです。そして、私には、一部だけだったのかもしれませんが、全社員が私のこと良い風には思っていないと言う被害妄想的な発想になっていて、私と社員の間には、相当な溝がありました。
樋谷;そんな状況でも、社員には毎月お給料も支払わなければいけませんし、私が社長になったからと言って状況が好転するわけでもありません。資金繰りは苦しかったです。
-どうされたのですか?
樋谷;A社長のアドバイスで、借り入れをしようと模索しましたが、就任1年目の社長には実績がないと言うことで借り入れは結局出来ませんでした。
深まる社員との溝
-では、自力で売り上げを上げて回転させるしか・・・
樋谷;何とかしなきゃと言う想いで、何かないかと探している時に郵政関連の入札案件を見つけました。番頭や社員に相談しても反対されるのは分かっていましたので、黙って、入札し、落札しました。率はあまりいいとは言えませんでしたが、会社を守るためと思い、取り組みました。
-ばれなかったんですか?
樋谷;それが、ある時、うちの社員が配送をしている時に、見つけてしまい。番頭に報告され、もうそれはひどい剣幕で「あなたは、会社を私物化して、なんだと思っているんですか!もうちょっと社長として会社の事考えて下さいっ!!」と・・・激しく突き上げをくらいました(汗)
樋谷;会社の事考えろ・・・って言われても、考えてやったつもりでしたし、当時の私には、「会社のことを考える」って何をどう考えればいいのか?それすらも分からない状態でした。
樋谷;もうこの時ばかりは、私も怒り心頭で、会社のこともさることながら、自分の身の保証のこともそっちのけで、もうどうでもいいっ!って思い、唯一私しか出来ない意思決定である会社を潰すと言う選択肢を真剣に考えました。
うちの会社は宝の山
樋谷;何をやっても裏目、裏目。社員からは全くいいように見られることはありませんでした。
-しんどかったですね。
樋谷;こんなこと、誰にでも言えませんし、正直、しんどかったですね。そして、私の胸の中には「ずっと(会社を)潰したい」そればかりがありました。
樋谷;2017年~18年にかけてM&A(事業合併吸収)の話題が商工会議所などでも取り上げらることが多く、私もいつか「M&Aで会社をバイアウトしようと・・・」と考えるようになっていました。そのためには、エエ会社にせなあかんってその頃からぼんやりとそう思うようになっていた時、ある中小企業診断士の先生に出会い、思い切って胸の内を打ち明けてみたんです。すると、その先生から「それやったら、まずは、会社のエエとこから探してみたらどうですか?」とアドバイスを頂きました。
-何か気づきはあったのですか?
樋谷;それが、そういう視点で見てみるとうちの会社にはいっぱいいいところがあることが見えてきたんです。
-例えば
樋谷;俗に、1社依存って良くないっていうじゃないですか?
-そうですね
樋谷;うちの会社は、ある大手運送会社と長年お付き合いしてきて売上、稼働シェア共に、ほぼその会社1社に依存状態でした。しかし、その要因を分析してみると、細かな要望に応えていたり、難しい苦労の多い仕事でも知恵を出して、先方の依頼にこたえていることなどが分かって来たんです。ただ単に、仕事が来るのを待っているだけじゃ。社内としてその仕事をどのようにしてお客様に満足頂くことが出来るのか智恵やノウハウを絞ってここまでやってきていたんだ。他社にないいい所や強みが、いっぱいあることが分かり、うちの会社って宝の山やん♪♪って素直に感じられるようになっていきました。
-社員さんとの溝はどうなっていったのですか?
樋谷;会社のエエところがいっぱい見え出してくることで自然と社員との何気ない会話も出始めるようになってきました。すると、全員私のことが嫌いって被害妄想を抱いていたのですが、それは全く私の勝手な妄想で、むしろ反対に私や会社のことを考えてくれていたりする人もいるんだってことが分かり出してきて、自分が勝手に自分の中でイメージを創り上げていたんだと深く反省しました。
樋谷;追い風も吹きました。私、犬を飼っているんです。柴犬の春子と言います。犬の散歩仲間が住んでいる地元にいたのですが、苦しい時、誰にもなにも相談出来ない時、彼女にずっと愚痴のように話していて、ずっと聞いていてくれた方がいるんです。ある時、その方が、「私があなたの会社に行ってあげる!」って言いだしてくれたんです。それが、今、総務や経理を任せている総務部長の乙井なのですが、とにかく心強い存在として、私をサポートしてくれています。
-ドンドンいい雰囲気に変わっていかれた
樋谷;それからは、社員ひとり一人の声を聞くために、定期的に個別の面談は欠かさず行うようになりました。
社長らしくなかった私が変わった唯一のこと
-業績の方はいかがですか?
樋谷;はい、お蔭様で創業以来大手運送会社様とのお取引を継続させて頂けています。また、番頭ともめた郵政関連事業も継続できるところは継続させて頂いているお蔭で社員も増え、所有車も増えてきています。
-素晴らしいですね。社員さんとの関係やお仕事への取組みも前のめりでいらっしゃるのがよく伝わってくるのですが、樋谷さんの一体何が変わったのですか?
樋谷;何も変わってません・・・笑。ただ、唯一は、決めたからではないでしょうか。
-決める。重要な事ですね。
樋谷;そうですね。エエ会社にして、従業員とお客様や地域、社会のお役に立っていることの喜びを感じられる仕事をしていきたい。今は本当にそう思っています。潰そうと思っていた人間が凄い変わりようです(笑)
将来のビジョン
-最後に、将来に向けてのビジョンを教えて下さい。
樋谷;荷物を安全に運ぶ。に加えて、お客様の課題を解決出来る会社になっていきたいと思っています。私たちは、お客様が維持発展されてこそ、我々合同サービスが維持発展できるのであります。ですので、お客様の課題を解決することで、より成長されることで、我々も成長させて頂けると言うそういう存在になっていきたいと考えています。そして、これまで蓄えてきたノウハウを活かして中小企業様向けにも、活動の幅を広げていきたいと考えています。
-そのための課題は?
樋谷;「営業力」「社員のモチベーション(意識)の底上げ」「会社の仕組みづくり」が目下の課題と思っています。
-樋谷さん、今日はありがとうございました。今後のご活躍ますます期待しています。
樋谷;こちらこそ、ありがとうございました。
◆合同サービス配送有限会社 ホームページ
https://goudouservice.com/